チーム分析「インテル・モビスター」②
どうも〜、ご無沙汰しております。
フットサルのスペインリーグは2017ー2018シーズンを終了してオフの期間に入っているのですが、これを見計らって当シーズンのハイライト動画全部見よう計画を実行しています。
最新のものから順番に見ていっているのですが、色々と作業しながらなのでなかなか進みません(泣)。
前から言っておりますが、一緒に作業をしてくれる方を募集しているので是非興味のある方はお声がけください。
遠方の方でも全然大丈夫ですので。
作業というのは具体的には動画を保存、編集ソフトを使ってコマ切れにしてそれぞれに起きた現象をタグ付けしていくというものです。
やってると意外と楽しいかもですよ〜(笑)。
さて、インテルモビスターのチーム分析の続きに入っていこうと思います。
前回まではざっくりとしたチームの紹介とオフェンスについて見てきました。
今回はまずディフェンスについて注目していこうと思います。
(2)ディフェンス編
ということディフェンスについて見ていこうと思うのですが、改めて考えて観るとディフェンスってなかなか分析しづらいなと思いました。
何せ相手ありきなのでチームの狙いというのがオフェンスに比べて見えづらい。
その中でも頑張って絞り出して行きたいなと思います。
こちらもトピック形式でいきます。
①プレスライン
基本的にインテルはハイプレスを徹底しています。
ボールを奪われたら即座回収。
これが大きな理念としてあるように思います。
恐らくスペインリーグの中でも最もアグレッシブなディフェンス網を敷いているのではないでしょうか。
このディフェンスの網をかいくぐって得点するのは非常に困難で、実際インテルは失点の少なさについてリーグトップです。
②プレスの仕組み
では一体どのような形でインテルはプレスをかけていくのでしょうか?
細かい部分を正確に見ていくのは非常に難しいのですが、私は基本的にゾーンディフェンスが主体のコンビネーションディフェンスを取り入れていると思います。
コンビネーションディフェンスというのはゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスを併用するディフェンススタイルのことです。
基本的には次のような原則にのっとっていると思います。(これは割と常識レベルの話?らしいです)
ボールホルダーにプレスがかかっていないとき
この場合、基本的にディフェンスはマンツーマンとなります。
理由としてはボールホルダーにプレスがあまりかかっていない状態で受け渡しを行うと、次のようにライン間を使う(エントレリネアス)ことができてしまうからです。
ボールホルダーにプレスがかかっているとき
もうお分かりかとは思いますが、逆にプレスがしっかりとかかっている場合は次のように受け渡しを行います。
このマークの受け渡しを行うことによってプレスの強度をしっかり保つことができます。
この受け渡しを行い詰まってしまった相手が苦し紛れに出したパスをインターセプトしてショートカウンターに繋げるというシーンはときたま見かけることができます。
③前衛・後衛
実際の試合でのディフェンスは基本的に相手ありきなので、常に同じことをするわけにはいきません。
その中でディフェンスをする選手にもざっくりと前衛(前からプレスをかけてボールを奪いに行く選手)と後衛(後方からカバーリングなどでディフェンス陣を支える)に分けることができると考えられます。
インテルのそれぞれを代表する選手を紹介しましょう。
ポラ(前衛)
スペイン人のアラの選手です。
インテリジェンスと献身性が高く、オフェンス・ディフェンス共に高い評価を得ています。
ディフェンスの良さが分かるシーンというのはあまりないのですが、パスをカットしてチャンスを演出した場面を載せておきます。
トランジション(インターセプト、ショートカウンター、1対1、舐めシュート、面、ファインセーブ、ロングスロー、1対1、セダーノ)
オルティス(後衛)
チームのキャプテンを務める絶対的なフィクソです。
状況判断能力はさることながら、球際の強さやポジショニングのバランス感覚など非常に優れたディフェンス能力を持っています。
守備だけではなく、攻撃でもパス回しの組み立てや時には自らもフィニッシュに絡むなど貢献度が高いです。
インテルを底の位置から支える大黒柱と言っても過言ではないでしょう。
ハーフプレス(対クワトロ、カーテン、インターセプト、ショートカウンター、ミドルシュート)
④フロート
ハイプレスというのは普通にかけるだけでは上手く回避されてしまった場合に一気にピンチに陥ります。
そのため、インテルはリスクを管理しながら効率良くボール回収を図ります。
そのためのキーワードとなるのが「フロート」です。
フロートに関してはそれだけで記事が書ける立派な守備戦術になってきます。
さすがに全ては書けないので簡単に説明しておきます。
フロートというのは「浮く」という意味です。
サッカーをやっている人はなんとなく分かったかもしれませんが、自分のマークの所在がなくなることを示します。
それだけ聞くとあまり良いことのようには思えませんが、要は意図的に自分のマークを捨ててスペースを管理することでリスクを減らしているのです。
このフロートの活用例を見てみましょう。
クリアランス(クワトロ、1個飛ばし、3人旋回、エントレリネアス、フロート、囲い込み、横ワンツー、クリア)
この場面は基本的にマンツーマンで進んでいきます。
フロートが行われるのはこの瞬間です。
ライン間で相手選手がボールを受けたときに、もともとそのマークについていたべべ選手はフロート、つまりこのスペースの管理を選択します。
因みにインテルはエントレリネアスに対してはフロートを使うことが非常に多く、恐らくチームとしてデザインされていると思います。
べべ選手がフロートしたため、ボールホルダーに対してのマークがチェンジし、このようにプレスバック(後ろから追うようにプレスをかけること)という形でボールホルダーに迫ります。
この間にサイドの選手が裏を狙おうとするのですが、結果的にスペースを管理していたべべ選手がこのボールをカットしてピンチを防いでいます。
この一連の流れを見ていただいただけでは分からないかと思いますが、このようにフロートを使うことでリスクを減らしながらボールを奪おうとする場面が試合中に散見されます。
⑤牙を剥く瞬間
何だか大層な名前になっていますが、要は「取り所」などと言われる話です。
基本的にディフェンスしている側は受動的に相手のディフェンスに対応するのですが、ある場面になると敢えて能動的に動くことによって相手のミスを誘うことがあります。
インテルも試合を観ているとうっすらとその狙いというものが見えてきますので、2個ほど紹介しようかと思います。
エントレリネアスへの囲い込み
これは先程のフロートの項でも少し触れたのですが、相手がライン間を使って来たときはインテル側から仕掛けてボールを奪おうとします。
具体的に見ていきましょう。
まず、ライン間をこのように使われたとします。
このとき、ボールホルダーをもともとマークしていた選手はライン間から裏へのパスコースをケアするような位置どりをします。(主にワンツーへの対処が多くなります)
そして、ボールホルダーに対しては前線の2人が一気に潰しにいきます。
結果的にパスコースがなければ相手選手は囲い込まれる形となりボールを失うことになります。
このエントレリネアスに対する囲い込みは本当に殺しに行くかのような勢いで行われます。
ライン間で潰すことの大切を知っているからこその勢いなのでしょう。
参考動画
サイドでのダブルチーム
次に紹介するのはサイドライン付近で行われるダブルチームです。
ダブルチームというのはボールホルダーに対して2人がかりでボールを奪いに行くことです。
インテルは時折アラへの横パスに対してこのダブルチームを仕掛けることがあります。
また、リスク管理のために後ろ側の選手がフロートすることがあります。
この場合、前の選手はサイドへ追いやるようにプレスをかけて局所的な数的優位を作り出します。
自分なりにどのような状況でこのダブルチームが選択されるのか、何か共通点がないか探ろうとしましたがあまりよく分かりませんでした。
ほとんど選手達の判断に任せられているのかなと思います。
参考動画
この動画では正確にはダブルチームではなく、フロートによるリスク管理が行われています。
ハイプレス(対ダイヤモンド、ジャンプ、ダブルチーム、ゴレイロアッタク、インターセプト)
(4)セットプレー
最後にセットプレーについて分析していこうと思います。
セットプレーに関してはパターンがたくさんあり、なかなか断定した分析を行うのは難しいですが推測の範囲内で頑張って分析してみようと思います。
是非、チームを率いている指導者なんかは参考にしてみてください。
※めっちゃコアな内容の上に無駄に長いので興味の無い人が読むのは辞めとくのが無難かと(笑)
主要な初期配置ごとに分類して、どのような動きと狙いがあるのそれぞれ解説していこうと思います。
デフォルトタイプ
最初に紹介するのは次のような形で選手が配置についているときです。
何でこれをデフォルトタイプという名前で呼んでいるかと言いますと、基本的にセットプレーの際はキッカー・シューター・ファー詰め・後ろのカバーという役割をそれぞれが持つことが多く、この形はそれが最初からしっかりと明確化してるわけです。
なのでこれをデフォルトタイプと勝手に呼んでいます。
ここからどのような展開があるか見ていきます。
1つは次のように直接シュートを狙いに行く形です。
もう1つは次のようにブロックをかけてボレーシュートを狙います。
これに相手が対応してきた場合はブロックをかけた選手がファーサイドでフリーになるのでそこでボールを受けることができます。
基本的にはこのような狙いが存在してると思います。
参考動画
コーナーキック(ブロック、ボレーシュート、ファインセーブ、こぼれ球、ミドルシュート)
逆トライアングル
次に見ていくのは逆トライアングル、つまり次のような配置です。
ここから相手の出方によって狙いが変わってきます。
青3番の選手がどうするかがポイントです。
この選手がマンツーマンに近い形でついてきているとき、狙いとしてはここの2人がクロスする形でフリーでボールを受けようとします。
逆にこの選手がゾーンで壁を作る形で守っている場合。
1つはこのままダイレクトでミドルシュートというのがあります。
また、次のように2枚のブロックをかけることでボレーシュートを狙うこともあります。
参考動画
コーナーキック(ミドルシュート、ダイレクトシュート、ファインセーブ、リカルジーニョ、セダーノ)
トライアングルの旋回
次に見るのは三角形がある方向に旋回していく形です。
三角形の形は厳密には決まっていないのか分かりませんが、次のような微妙な状態になっていることが多いです。
ここから一気に反時計回りに回っていきます。
狙いとしてはファー詰め。
ダイレクトのシュート。
そしてミドルシュート。
これらを相手ディフェンスの状態を見ながら選ぶ形になっているように思います。
参考動画
コーナーキック(トライアングル、間接ブロック、ミドルシュート、ダイレクトシュート、ゴール、ガディア)
ボックスアイソレーション
これは初期配置はデフォルトタイプに似ているのですが、ここから一度ボールをサイドの選手に渡します。
そして、そのボールを逆サイドに振りアイソレーションを図ります。
この間にゴール近くでは次のような動きがあります。
そしてここからパラレラとフラッシュの動きによりボールホルダーに選択肢を与えます。
参考動画
コーナーキック(フィクソのコントロールオリエンタード、アイソレーション、アラ、カットイン、ピヴォ当て、反転シュート)
ディアゴナルライン
ディアゴナルというのは斜めという意味です。
つまり、次のような斜めに一直線になったような配置を意味します。
ここから次のように順番にスペースを狙っていきます。
キッカーがその動きに対して空いたところを狙うという形を取っています。
こちらもトライアングルの旋回と同じくキッカーの判断が大きいサインプレーとなっているように思います。
参考動画
斜めにはなっていませんが動きとしては同じです。
コーナーキック(オリゾンタルライン、ブロック&コンテニュー)
②キックイン
次は高い位置でのキックインです。
チョンドン
言わずとしれたチョンドンです。
チョンドンを知らない人はググってください(笑)。
チョンドン自体は有名なので説明を省きますが、インテルは普通のチョンドンに加えて次のようなオプションを用意しています。
ここから抜けた選手が空けば浮き玉でボレーシュート。
空かなければ偽ピヴォに当てるかフィクソに戻します。
このようにオプションを用意しておくことで、単なるチョンドンでも相手に簡単には的を絞らせないよう工夫しています。
参考動画
ハイキックイン(チョンドンの形、偽ピヴォ当て、内側ターン、反転シュート、ミドルシュート、エルサンドロ)
トライアングルの旋回
コーナーキックでも見ましたが、キックインでもトライアングルの旋回が見られます。
説明は省きますが、次のような渦を巻く形で動くんでしたね。
参考動画
ハイキックイン(逆トライアングル、フリックシュート、こぼれ球、ファインセーブ、フンベルト、セダーノ)
逆トライアングル
インテルのキックインの鉄板と言えば逆トライアングルです。(勝手に自分がそう思ってるだけかもしれません(笑))
次のような状態でスタートします。
ここからファーサイドのいる選手がボールサイドの偽ピヴォの位置に入ります。
ここでニア側の選手が後方の選手のマーカーへブロックをかけに行きます。
ここからは相手の対応次第なのですが、もしこのブロックに対応できていない場合は次のようにミドルシュートを打つことが多いです。
これに対して次のようにマークを入れ替えるという対応をしてきた場合、ブロックを外して一気にファーを狙います。
ちなみにこれを「ブロック&コンテニュー」なんて呼んだりします。
他にも色々とオプションは存在しますが、基本はこのような動きになってきます。
リカルジーニョ特製オーバーヘッド
何だかへんてこりんな名前が出てきましたね(笑)。
これは今シーズン何故かインテルで流行ってたやつです。
仕組みはいたって単純で次のようにファーポスト付近にいるリカルジーニョへ直接ループ気味のパスを送り、それをオーバーヘッドするのです。
結局シーズン中に決まることはなかった気がしますが、意外と惜しいシーンもあり1つの武器になっていたように思います(笑)。
③ゴールクリアランス
最後にゴールクリアランスについて見ていこうと思います。
ゴールクリアランスはプレス回避における大切な場面で、サインプレーを用意しているチームも多く1つのセットプレーと考えても良いと思います。
ただインテルはそこまで縛りは無いように思いますが。
偽ピヴォ
偽ピヴォの場合、基本的にがっつり来られたら偽ピヴォに当てます。
ほとんど簡単に納めてしまうので相手からしたら嫌ですね(笑)。
参考動画
クリアランス(偽ピヴォ、ロングスロー、偽ピヴォ当て、内側ターン、反転シュート、ミドルシュート、エルサンドロ9
クワトロ
クワトロの場合は偽ピヴォに比べて少し決まりごとがあります。
主に次の2つを使ってフリーの選手を作り出そうとしているように思います。
1つ目は同じレーンでの循環。
2つ目は中央レーンでのミックス。
なかなかこれを図だけで理解するのは難しいです。
興味のある人は動画で研究してみてください(笑)。
参考動画
クリアランス(クワトロ、2枚抜け、2枚抜け、カーテン、エントレリネアス)
ということで今回の記事は以上になります。
長文にご付き合いいただきありがとうございました。
1つのチームを分析するというのは難しいですね。
インテルにはきっと私には分からない決まりごと・コンセプトがまだまだ無数に存在していると思いますが、少しでもインテルというチームについての理解深まったのであれば幸いです。
次からはバルセロナ編に入っていきます。
ご期待ください。٩( 'ω' )و