フットサル 日本vsウクライナ マッチレビュー
お久しぶりです~。
先日用事があって淡路島に行ったんですが、意外と都会な場所もあってびっくりしました。
勝手に田舎だと思い込んでいて申し訳ない気持ちです(笑)。
是非機会があれば淡路島に行ってみてください~。
玉ねぎが美味しいですよ。
さてさて、余談は置いておいて今回はマッチレビューをやろうと思います。
前はスペインリーグの全然有名じゃないチームをやっていたのですが、今回は心機一転「日本代表」の試合を見てみようと思います!
皆さんはそもそもフットサルの日本代表の強さがどれくらいか知っていますでしょうか?
一応アジアではイランに次ぐ2番手をタイなどと争っているような状態です。
これだけ聞くと結構強いように感じますが、世界レベルで見ると正直まだまだと言わざるを得ないレベルかもしれません。
実際2016年のワールドカップ出場を懸けたアジア予選では格下相手に敗れ、出場権を得られませんでした。
ワールドカップにすら出れてないんです!
いやー、やっぱり2020年のワールドカップには少なくとも出場していただいて、欲を言えば本大会でも大暴れしてほしいですよね?
しかし、残念ながら今のフットサル日本代表の注目度はとても低いです。
今回のAマッチを取り上げたメディアがいくつあったでしょうか?
ましてやその内容を具体的に批評する記事などあったでしょうか?
つまりつまり。
今回僭越ながら、先陣を切ってフットサル日本代表の現状を批評していこうというわけです。
是非、フットサルに興味の無い人もご覧になっていただければと思います。(にしては難しすぎたかなぁと書いてから反省...)
フル動画はこちらから。
Японія vs УКРАЇНА | Quadrangular international futsal tournament
※今回は、ブログと平行に動画をツイッターに上げるという試みをしてみました。詳しく見たいという人はそちらも参照してください。
— グロッケン(フットサル用) (@giriguro_3) 2018年9月29日
(1)対戦相手
今回の対戦相手はFIFAランキング9位のウクライナ代表です。
日本代表は現在16位なので格上との対戦ということになります。
ウクライナと言えば堅実なフットサルというイメージがあります。
オフェンスはピヴォ当てを軸としながら、ディフェンスはしっかりとブロックを組んで相手を待ち構えるという感じです。
先日あったEURO(ヨーロッパの国限定の大会)では、スペイン代表に0-1で敗れましたがやはり実力はある程度あると考えて良いでしょう。
このように簡単に勝てる相手ではないことは確かです。
ただサッカーの方ではワールドカップ前の親善試合で負けていますので、何とかフットサルの方で敵を討っておきたい所ですね(笑)。
(2)試合内容
①積極的な守備とそれに付き纏う脆さ
今回の日本代表の守備は非常に意図がはっきりしていたように感じます。
狙いとして、高い位置から相手のプレーを限定していって自分たちが奪いたい所をはっきりさせることによって、ショートカウンターに繋げたいという思いがあったのだと思います。
そのために、日本はイプシロンプレスと呼ばれるものに近い形を採用していたように思います。
イプシロンプレス
イプシロンプレスというのは、フットサルのディフェンスのフォーメーションのようなものです。
ざっくり言えばこんな形のやつです。
どうしてイプシロンプレスと呼ばれてるかというと、この形がΥ(イプシロン)だからですね。
なので、Y字プレスも呼ばれたりします。
このイプシロンプレスの特徴は相手のピヴォ(ピヴォというのはサッカーで言うFWのこと)を抑えることができることです。
詳しくはまた機会があれば記事にしようと思いますが、ひとまずはそういう形を基本としたゾーンディフェンスだと考えてください。
このように、イプシロンプレスを軸として序盤からウクライナに対して積極的にディフェンスをしていました。
上手くいく部分もありましたが、時に日本のディフェンスに潜む脆さも見えてきました。
このイプシロンプレスというのは次のように前線で2対3という数的不利の状態にあります。
もちろん逆に言えば後ろでは2対1の数的有利が存在するわけですが、前線でボールを奪うためには最前列の2人がしっかりとしたスピードと判断のもとでディフェンスをしなければなりません。(つまり高い強度を保つ)
しかし、もちろんウクライナも馬鹿ではありませんからその最前列(1列目)のディフェンスを上手くかいくぐられてしまうことはあります。
この際に重要となってくるのが後ろ2枚の的確な対応と、前線の選手の素早い戻りです。
しかし、ここの甘さを露呈してしまったのが日本の失点シーンです。
3失点のうち、2失点を確認してみましょう。
1失点目(ピサーダによるライン突破)
まず、1失点目の原因となったのがピサーダと呼ばれる足裏でのパスです。
イプシロンプレスでは次のようにストロングサイド(つまり誘導したい方のサイド)へと相手を誘導するようにプレスをかけます。
ここで次のように抜ける選手は半分無視をして、新たなストロングサイドを構築します。
これを利用してピサーダによってストロングサイドとは逆のサイド(=ウィークサイド)へパスを出すのです。
ここまではよくある話なのですが、問題はこれをやられた時、次のように急いで撤退せねば相手に数的不利を作られてしまうのが分かりますやね?
しかし日本はこの撤退の判断を誤り最終的に失点してしまいました。
撤退のスピードが速ければ防げた失点なだけに、非常に悔やまれます。
参考動画
2失点目(横ブロックによるライン突破)
2失点目では横方向からのブロック(スクリーン)を利用したライン突破によって失点を招いています。
状況としてはこのようにブロックをかけられ、カットインを許してしまいました。
ここで前線のもう片方の選手は次のようにパスコースを切りながら奪いに行くという決断をします。
しかし、さすが百戦錬磨のウクライナ。
この決断にも動じず簡単にそれをかわしてしまいます。
しかし、これでもまだ日本としては素早い撤退があればなんとか失点は防げます。
しかしここでも撤退が間に合わず、さらに後ろの2枚はディレイの際に誘導していたサイドからのサイドチェンジを許すというミスを犯してしまい、最終的に失点に繋がってしまいました。
こちらの失点も勿体ない失点でした。
参考動画
※ウクライナ代表も同じような崩され方を日本にされたが、上手く対応し失点を逃れた
ミドルキックイン(偽ピヴォからクワトロへ、逆アラの動き、コルテ、受け渡し、ピサーダ、エラー、疑似カウンター、縦突破、サイドシュート、こぼれ球、ファインセーブ)
他にも似たようなシーンは多い(それだけゾーンディフェンスの攻略にピサーダは多用される)
ローキックイン(偽ピヴォ、対ゾーンディフェンス、バックパス、フィンタ、運ぶドリブル、ピサーダ、パラレラ、疑似カウンター、1対2、サイドシュート、ポスト、リカルジーニョ)
ローキックイン(クワトロ、リターン、ピサーダ、パラレラ、鋭角パス、疑似カウンター、ディレイ、撤退)
このように、プレスを上手くかいくぐられた際の対応が今後の大きな課題であると言えるでしょう。
ただ、献身的に前からプレスをかけることができる選手も多くそれは良い傾向です。
また後半ではでは少し修正された部分も見受けられたので、今後が楽しみですね。(修正箇所について詳しく知りたい方はツイッターをご覧ください、1個しか見つけられませんでしたが・・・)
②見つけられない攻撃の形
今回のウクライナ戦では、日本はなかなか自分たちでパスをつないでからチャンスへと繋げることができなかったように思われます。
何度か4人旋回を軸に崩そうというシーンもありましたが、それ以外はあまり有効な攻撃が見られませんでした。
4人旋回
のちにオフェンスの良かった部分も書いてありますが、世界で戦っていくためにはもっと工夫の富んだ攻撃が必要でしょう。
これからに期待したいです。
③狡猾なウクライナのディフェンス
ウクライナ代表は先制した後、試合の状況を見てプレスのラインを少し下げました。
これに対して日本代表はかなり攻めあぐねていたように感じます。
プレスラインを下げるというのは、一見消極的な策のように思えます。
いわゆるリードした1点を守りに入るという形に捉えることもできます。
しかし、ウクライナのディフェンスの素晴らしい所はその強度を下げることがなかったことです。
プレスラインを下げながらも、相手の隙を見つけると一気にプレスをかけてミスを誘発するのです。
それが顕著に現れたシーンを1つ見てみましょう。
カーテンに対するジャンプ
ミドルプレス(対ダイヤモンド、カーテン、スイッチ、ジャンプ、詰まり、アラアラ)
このシーンではウクライナのディフェンスの狡猾さが見て取れます。
最初はプレスがそこまでかかっていないことは分かると思います。
日本はここでカーテンというアクションを行います。
一度ディフェンスはマンツーマン気味にそのカーテンに対応します。
しかし、ここで相手の隙を突くような形でいきなり進路を変えて一気にボールホルダーへと襲いかかりパスミスを誘うことに成功しました。
これはほんの一例でしたが、このようなシーンが何度か見られました。
インテリジェンスの高さをまざまざと見せつけられる形にだったように思います。
日本としてはこのようなディフェンスに対しての対応をしっかりと練っていきたいですね。(他のウクライナの特徴的なディフェンスに関してはTwitterをご覧ください)
④偽ピヴォとドリブラーに見出す希望
日本代表に関してはかなり批判的な話ばかりをしてきましたが、その中でもオフェンスに関して良かった部分が2点ありました。
1つ目は偽ピヴォにボールを当てることを軸とした攻撃です。
こちらは主にペスカドーラ町田に所属する森岡薫選手が目立っていました。
森岡にボールを当てることで相手に撤退することを余儀なくしたり、フィクソとの駆け引きに勝って反転したりなど日本代表の攻撃を牽引していたように思います。
その象徴的なシーンがこちらの反転ですね。
他にも何度か偽ピヴォを起点とした攻撃が見られました。(Twitter参照)
森岡選手の他にも今回は招集されなかったエルポソの清水選手などの活躍が期待されますね。
2つ目はアイソレーションからのドリブルです。
日本人がドリブルが上手いのかどうかは正直まだ計りかねますが、少なくともこの試合ではアイソレーションからのチャンスが目立ちました。
パスでの崩しが必要ない分、相手のディフェンスに苦しんでいる時は今後も1つの対応策にしていけるのではないでしょうか。
特に13番のシュライカー大阪に所属する加藤選手に注目ですね!(推し)
参考動画
⑤切り替えの速さと仕留め切れない残念さ
日本代表は全体的にミスも多くあまり明るい内容は多くありませんでしたが、攻守の切り替えのスピードというのは非常に良い部分があるように感じました。
特に面白かったシーンがこちらです。
ローキックイン(ダイヤモンドからクワトロへ、フィクソの両足使い、コルテ、ピサーダ、3人旋回、受け渡し、ダイレクトパス、エントレリネアス、疑似カウンター、サイドへの囲い込み、奪取、逆ゲーゲンプレス、奪取
このシーンでは日本の選手が相手に囲まれてサイドに誘導されます。
ここから相手陣地まで運んだ後囲まれて奪われてしまうのですが、それを狙っていたのか物凄いスピードでボールをかっさらい、ショートカウンターへと繋げました。
惜しくも点には繋がりませんでしたが、非常に素晴らしい切り替えによるショートカウンターだったように思われます。
他にもいくつか速い切り替えや良いディフェンスからのショートカウンターのシーンがあり、ここは日本がこれから1つの武器にしていけるのではないかなと感じる部分です。
ただ、やはりそうなると課題は「決めきれない残念さ」です。
もちろん感情論に走るつもりはありませんが、やはりしっかりと仕留めることができないとせっかくのショートカウンターも意味がありません。
ここをしっかりと決め切れる選手が増えてほしいと思います。
そのためにも普段戦っているFリーグから、高い強度の守備を実行して競い合うことで決定力が必要とされる環境にしていってほしいなと思います。
⑥暗雲立ち込めるパワープレー
こちらはかなり厳し目の題目になっていますが、今回の日本は2点差で負けている状態でパワープレーを始めました。
しかし、そこから大したチャンスをほとんど作ることができませんでした。
工夫は見えることは見えるのですが、あまり効果的でなかったように思います。
アジア予選を戦っていく上でパワープレーが上手ければ安定感が違いますので、しっかりと修正してほしい物の1つと言えるでしょう。
⑦セットプレーを一つの武器に
日本人は職人肌と言われますが、やはりある程度決まったことを行うセットプレーは武器になるかもしれません。
特徴的なシーンが2つありました。
1つ目は日本代表の一時同点となる1点目のゴールを演出したボレーシュートです。
ハイキックイン(逆トライアングル、背後からのブロック、ボレーシュート、ゴール)
セットプレーでボレーシュートから得点を取れるというのは凄く大きいんです。
ボレーシュートっていうのは迫力こそありますが、やはりその難易度は高いです。
そのため、相手はある程度ボレーシュートを打たれても良いかな〜と思えるわけです。
しかしこのボレーシュートが簡単に決められるようであれば相手としてはボレーシュートに対しても強く行かなければならなくなります。
するとどうしても中が空いてしまうわけです。
このシーンも外に対しての警戒が薄い所を突いた安藤選手の素晴らしいボレーでした。
センターライン付近からのパラレラ
こちらは1つ日本代表の特徴的なキックインの形になっているパラレラからの攻撃です。
やっていることは非常にシンプルなのですが、春頃に行われたフランス戦でもこのパターンからチャンスを演出しゴールを決めています。
詳しく説明してみましょう。
キックインの時にこのように偽ピヴォの陣形を取ります。
ここでアラの選手が次のようにボールをもらいにいきます。
ここから一気にスピードと方向を変えてパラレラをします。
本当にパターンとしてはシンプルなのですがしっかりとチャンスを作れていることから、これからもしっかりと武器にしていってほしいですね。
参考動画
ワールドカップやヨーロッパ選手権などを観ているとコーナーキックやキックインからのゴールも多く、日本もしっかりと磨いていって欲しいなと思います。
セットプレーからの綺麗な崩しや豪快なボレーシュートを期待しましょう!
(3)総括
ということで日本対ウクライナは1対3で敗戦という結果に終わりました。
やはり強豪ウクライナ。
簡単には勝たせてくれません。
日本としては課題がはっきりとしたゲームだったように思います。
決定力不足、と片付けるのは簡単ですが失点シーンは充分防ぎようなあった場面でしたしオフェンスもまだまだ改善点はあるように感じます。
フットサル日本代表はまだまだ注目度が低いです。
アジアカップ決勝ですらほとんど取り上げられることはありません。
そのためにも、まずしっかりと2020年のワールドカップへの参加権を勝ち取ってほしいと思います。
そしてワールドカップで大躍進を遂げることができれば、少しは注目度も上がり日本フットサル界にとってプラスになるのではないでしょうか?
これからも頑張っていってほしいですね!
頑張れ日本!(笑)